受験当日、娘を見送ったあと|母が神社を巡った理由

受験・進学

試験会場の門の前で、
娘の背中を見えなくなるまで見送った。

大勢の人波に紛れて、
娘は一度も振り返らず、
まっすぐ進んでいった。

その背中を見た瞬間、
涙が出そうになった。

ざわめきの中にいるはずなのに、
私の心臓の音だけが聞こえてくるようだった。

今まで、できることはやってきた。

母としても、ナースとしても。

体調を崩さないように気を配り、
食事を整え、
眠れるように考え、
不安そうな娘の横で、
私なりにできることを探してきた。

受験会場に入っていく娘の背中を見送った瞬間、
もう私にできることはないと分かっているけれど、

それでも、何かをせずにはいられなかった。

さっきまで、私の手を握りしめていた
震える娘の小さなぬくもりが、
てのひらにまだ残っているようで、
すごく心細くなった。

ホテルに戻って待つこともできた。

カフェで、時間をつぶすこともできた。

でも私はじっとしていられなかった。

気が付けば、ホテルの前を通り過ぎ、
私は神社に向かっていた。

普段は信心深い方ではない。

ただ、この胸のざわつきを、
誰かに受け止めてほしかった。

不安に飲み込まれないように、
私も必死だったのだと思う。

これは受験当日、
娘を試験会場へ送り出したあと、
私が3つの神社を巡りながら、
自分の心と向き合った一日の記録です。

1つ目の神社|まだ祈る言葉が見つからなかった

最初に向かったのは、
静かな小さな神社だった。

誰もいない境内で手をあわせる。

けれど、心は少しも落ち着かなかった。

頭に浮かぶのは、試験会場へ向かう
娘の表情ばかり。

緊張していた顔。

何も言わずに歩いて行った背中。

人波の中に消えていった姿。

私の心は焦りと不安でいっぱいだった。

ただ手を合わせているだけ。

不安に飲み込まれないように、

目をつむって、手をひたすら合わせるそんな時間だった。

二つ目に訪れた神社(荏原神社)~祈りが少し変わった場所~

そのあと、川沿いをずっと歩いた。
ただ歩くしかなかった。

歩いていくうちに、
少しずつ呼吸が深くなる。

川沿いをずっと進んでいくと、
ピンク色の花が見えた。

その奥に、そっとたたずむ神社。

そこで、手を合わせた時、
少しだけ、祈りの形が変わったような気がした。

『合格してほしい!』
もちろんそれが本音だった。

だけど、手を合わせながら、出てきた言葉は
少し違っていた。
力を出し切れますように!
無事に帰ってきますように!

結果だけではなく、
娘そのものを思う祈りへと少しずつ変わっていった。

合格してほしい。

でもそれ以上に、
今日まで頑張ってきた娘が、
自分の力をちゃんと出せますように。

試験が終わった後、
少しでも、ほっとした顔で
戻ってきますように。

そう思った。

3つ目の神社(明治神宮)|信じて待つしかないと気付いた

三つ目に向かったのは、
明治神宮だった。

原宿のにぎやかな空気の中を
歩いていたバズなのに、
鳥居をくぐると、
空気がすんと澄んだような気がした。

大勢の参拝者がいるはずなのに、
自分の砂じゃりと踏みしめる音だけが、
やけに大きく聞こえてた。

一歩ずつ踏み出すたびに
胸の中にあった「不安」が、
少しずつ溶けていくような感覚。

思い出すのは、
頑張ってきた娘の背中だった。

逃げ出したい日もあった。
泣いた日もあった。
模試の結果に落ち込んだ日もあった。

それでも娘は前に進んできた。

机にひたすら向かう姿。
ホテルで緊張して、不安そうだった娘の顔。

試験会場で、
一度も振り返らず歩いて行った背中。

そのひとコマひとコマが浮かんできて
不思議な胸の中に温かい気持ちが広がっていった。

どんな結果でも大丈夫!
娘の努力は決して無駄ではない。

私の自慢娘であることに変わりはない。
これからも変わらず娘を誇りに思う。


そう思った時、ようやく少しだけ、
私は母として落ち着けた気がした。

娘が戻ってきたときには、
笑顔で迎えてあげよう。

余計なことは言わずに、
ただ、「おつかれさま」
と言ってあげよう。

そう思った。

祈った一日を終えて!

祈ったからと言って、
結果が変わるわけではない。

それは分かっている。

でも、祈ることで私は静かに待つことが出来た。

不安に飲み込まれる母ではなく、
娘を信じる母として。

受験当日、
親にできることは本当に少ない。

試験会場に入ってしまえば、
もう声をかけることも、
手を貸すこともできない。

できるのは、
その背中を見送り、
信じて待つことだけ。

でも、この日、私は神社を巡りながら、
その「待つ」ということを、
少しだけ覚えることができたかもしれない。

どうか今日という一日が
娘の人生の、
そして私の人生の片隅に静かに残る
1ページになりますように!

そして、これを読んでくださっている
同じように受験生を見守るお母さんや、お父さん。
そして、受験生本人が少しでも穏やかに
受験の日を迎えて、自分の力を出せますように!

ただ祈るだけしかできなかった日。


受験が終わった後、今度は親としてどう見守るかに迷った日のことは
こちらに書いてあります。
受験を終えても終わらない親の葛藤

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