ただいまー!
玄関から嬉しそうな声が聞こえる。
ふと顔を上げた娘を見て、思わず二度見してしまう。
真っ黒だった娘の髪がふんわりとしたピンク色に染まっていた。
正直言うと、最初に頭に浮かんだのは
「ちょっと派手だなあ」という言葉だった。
「どう?」照れくさそうにちょっと不安そうに聞いてくる娘に
私はあわてて言った。
めちゃ可愛い!似合うよ。
娘は嬉しそうに笑って鏡の前に!
でも、その後も何度か、
「ほんとに似合うかなあ?」と言いながら、鏡の前で髪を触っていた。
もしかしたら、娘は私のわずかな戸惑いを感じていたかもしれない。
めちゃ可愛い!本当に可愛いのに心は少しだけざわついていた。
嬉しいはず!なのに、ざわつく心
娘のピンク色の髪を見ていると
なんだか、娘がギャルになったような、
私の知らない人になったような気持ちになる。
ギャルがいけないわけじゃない。
今の時代、髪を染めることくらい珍しいことでも何でもない。
自由にやりたいことをやってほしいと思っている。
私だって、二十歳の頃、髪を染めていた。
そうなんだけれど、母の心は少しざわつく。
どこかで、あの小さかった頃のままでいてほしいと思ってしまう。
純粋無垢でいてほしいなんて、母の身勝手な願いだと分かっているんだけどね。
次女の姿を見て、長女に思いを寄せる
ピンクの髪を揺らして、
嬉しそうに照れくさそうにしている次女を見ていたら、
ふと、長女のことを思い出す。
そういえば長女も時々、「髪染めてみたいな」
と言っていたことがあったな。
でも、あの子は結局一度も染めることなかった。
優しく繊細な長女は、私の気持ちを汲んでいたのかもしれないな。
そんな長女は、この春大学を卒業して、社会人になる。
子供は少しずつ自分の道を歩いていく
子供の急な変化には、まだついていけない私。
どんな娘でもいい。そう思っているのは嘘ではない。
でも、ピンク色に染まった髪の毛は
私からの『自立宣言』のようにも思えて、
もう、私が守るべき「小さな存在」ではなくなったんだな。
と、嬉しいような寂しいようなそんな複雑な自分に気が付く。
子供が少しずつ自分の道を歩いていく。そんな変化に戸惑う母の気持ちは、
以前こんな記事にも書いています。
これからは、ピンクの髪をなびかせて歩く娘の隣ではなく、
後ろから、そっと見守れる私でいられるように
「心のへその緒」を少しずつ少しづつほどいていく時期なのかもしれない。